2016年

9月

12日

講演レポート 「スピルリナとシニアの栄養について」

去る8月23日(火)群馬県前橋市県勤労福祉センターにおいて、「スピルリナとシニアの栄養」夏季特別講演in前橋と題して、女子栄養大学の林修教授をお招きして講演会が開催されました。前日、台風9号が関東地方通過により各地に大雨をもたらし、天候が心配されましたが、前橋は35度の猛暑日となりました。暑い中、会場は林教授の講演を楽しみにされていた大勢の方で満席となり、活気ある講演会となりました。

スピルリナは熱帯地方の塩湖に自生し、らせん形をしている藻の一種です。35億年前に地球上に誕生した生物で、あらゆる動植物の起源といわれ人間の体内に必要とされる栄養素や機能向上に貢献する成分を50種類以上含んでいます。なかでもタンパク質はその60%も占めています。このスピルリナの4つの特徴をそれぞれ最新のデータよりご説明がありました。

女子栄養大学教授 林修 先生
女子栄養大学教授 林修 先生

特徴1 バランスのとれたたんぱく質(高いアミノ酸価)

高齢化社会の現代、サルコペニア(加齢に伴う筋力および筋肉量の減少)から転倒リスク因子が高まり、フレイルティ(高齢による衰弱)が要介護状態となる一因であり、加齢により活動減少し、食欲低下により、たんぱく質摂取が不足することから起きます。サルコペニア/フレイルティの予防には、たんぱく質を摂ることが大切になります。合わせて、レジスタンス運動(筋力トレーニング)で、呼吸が乱れない程度、反動をつけない程度の軽い運動をするなど「栄養と運動」が大切です。
またたんぱく質不足で筋肉が弱るとブドウ糖の取り組みができず、高血糖・糖尿病を招くことになるので、スピルリナの摂取で筋肉細胞をしっかり作ることにより糖尿病の予防にもなります。

スピルリナはらせん形をした藍色細菌(シアノバクテリア)
スピルリナはらせん形をした藍色細菌(シアノバクテリア)

特徴2 免疫賦活作用

免疫には全身免疫と腸管粘膜免疫の2種類あります。全身免疫は皮膚、傷口から入ってきたばい菌を血液の中でやっつけるもので、腸管粘液免疫は気道や腸管などの粘膜から入り込もうとするばい菌を防ぎます。腸管粘膜免疫の敵にはアレルギーを起こすアレルゲンもあります。スピルリナの摂取で全身免疫の力が高まり同時にIgA抗体の働きを抑え、アレルギーによって引き起こされた粘液の炎症を抑えられます。アレルギーを薬ではなく、スピルリナでより安全に抑えられると期待されています。
また、赤血球・白血球が作りやすくなるため貧血および免疫能改善、NK細胞の活性化や、HIV感染における免疫能改善効果も認められています。

特徴3 食物繊維9%

スピルリナには食物繊維が多く、腸内フローラの改善・血糖上昇抑制・有害物質を排除する作用があり、食物繊維の不足によって糖尿病や大腸癌のリスクが高まるのを制御できます。

特徴4 抗酸化・抗炎症作用

活性酸素による細胞障害で、さまざまな病気が発症しています。スピルリナは抗酸化力に優れているため、高血圧改善・虚血性脳障害の抑制・脳内のドーパミンを増やすことによりパーキンソン病予防効果があります。

最後にシニアの栄養面から生活習慣病のリスク低下予防として、特にシニアに不足しがちな栄養素の中から、マグネシウム・亜鉛不足による疾病の対策においてスピルリナの有用性についてのお話でした。
マグネシウムが不足すると糖尿病・不整脈・虚血性心疾患・動脈硬化症などの生活習慣病のリスクが高まります。亜鉛が不足すると、皮膚炎や味覚障害、免疫機能障害、神経感覚障害、肝臓でのインスリンの分解が進み糖尿病を招きます。
スピルリナは、これらの症状を改善・予防できる安心・安全な食品です。

まとめ

60歳を過ぎお仕事等が一段落した頃から、隠れ栄養失調などにより糖尿病の発症が増えてくるそうです。バランスの良い食事・運動を心掛けた生活をしたいと思いますが、なかなか食事だけでは補えないのが実情です。充分な栄養摂取、そして、免疫能改善・アレルギー・糖尿病等々、様々な病気の予防改善効果のあるスピルリナはアンチエイジングの救世主ですね。
高齢化社会の現代、健康寿命を延ばし、生き生きと充実した生活を送れる「鍵」が身近にあったことに感謝です。

(文: 芳賀 陽子)


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